FC2ブログ
K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
202007<<12345678910111213141516171819202122232425262728293031>>202009
安部壽子詩集『むかしはなび』・・・木村草弥
安部_NEW

──新・読書ノート──

       安部壽子詩集『むかしはなび』・・・・・・・・・・・・・木村草弥
                 ・・・・・空とぶキリン社2019/12/20刊・・・・・・・・

安部さんの詩集は、このブログで第九詩集『葉脈の中の家』を採り上げたことがある。 ← リンクになっているのでお読みいただきたい。
だから、この本は安部さんの第十詩集ということになる。
この詩集の要点は、画像で読み取れるようにカバーに高階杞一氏が書いていることに尽きるだろう。
全部で24篇の作品が載っているが、題名の採られた詩を引いてみよう。

       むかしはなび       安部壽子 
            ──富田キヌさんに捧ぐ──

   負われていたのは かな江さんの背中です
   母の背を わたしたちは知りません

          ・・・・・・・・・

   かな江さんの背中は よく眠れる丸い背で
   松弥さんの移り香は 合歓の花でありました

   わたしの家「秋津や」は未明の火事で全焼と
          ・・・・・・・・・
   明治大正昭和を生き 時代の
   お相伴にあずかった「秋津や」は
   その遊興の終わりの
   刻印を押されます 類焼のかたちで

          ・・・・・・・・・

   平成です 「秋津や」はこども達の手で打ち止めに
   日日と暮らせば 人の生は 仕掛け花火の心地です

           ・・・・・・・・

   平成の雨空を 音の響きで終わりました
   あれは昭和生まれの ひたすらな 昔はなびです

          ・・・・・・・・・

   かな江さんの背で 子どもは丸く眠りへと
--------------------------------------------------------------------
長い詩なので途中を端折ったので、お許しを。
この詩に、この本の要約が籠っていると言えるだろう。
幼い頃への郷愁と、昭和、平成、令和へと続く時代が象徴されているだろう。

ここで巻末に載る作品を引いておきたい。

        禁猟区     安部壽子

   平成の始まりの夏
   縄文の地を訪れた女は 杉の大木が連なる
   ひとつの道に惹かれる
    
        ・・・・・・・・

   平成の終わりの夏
   二百年を経る杉老木は 一本残らず切り
   倒される

         ・・・・・・・・

   そうして 倒れた大杉は 一本の高さを
   忘れるだろう

       ・・・・・・・・・

   出入り口をふさがれ女は年輪をこそげる
   あらがいがたい事象と共に 迂回はない
   デンデンとした日盛りを 手庇をかざし
   坂を下る 虫捕り網を手に 少年が坂を
   上って来る

         ・・・・・・・・・

------------------------------------------------------------------------
選び抜かれた詩句が的確である。
いざわ直子さんの表紙絵も、快い。
本年の年末を締めくくる詩集として有難く頂戴したことを記して終わります。
ご恵贈ありがとうございました。              (完)






               
コメント
コメント
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
トラックバック URL
トラックバック
copyright © 2020 Powered By FC2ブログ allrights reserved.