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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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村島典子の歌「スズムシ」30首・・・木村草弥
晶_NEW

──村島典子の歌──(40)

      村島典子の歌「スズムシ」30首・・・・・・・・・・・・・木村草弥
               ・・・・・・「晶」108号2019/12掲載・・・・・・・・

         スズムシ      村島典子

   しづかなる怒りをひそめ歩きゐる幾人かがあり投票所まで
   あいまいな人と見ゆるか見られつつ投票終へぬ変はらざるとも
   増水を危ぶみて草は刈られたり赤裸になれば川たよりなし
   平らかに水は流れて小さき魚群れおよぐさへ今朝はかなしき
   ことしまたスズムシ来たり朝夕べ友としなさむ食卓の上に
   そよろそよろとをさなき髭のひたすらを見つつし酷暑を耐へむとすべし
   高値なるきうり茄子は鳴きそめしスズムシのために購ひて来つ
   スズムシの八匹がゐるわが家はたのしきところみじかき夏の
   これの世にをのこご一人生みしことけふは不思議のひとつと思ふ
   はやわれの老いにけらしな帰り際なんともいへぬ表情を見す
   運転席より右腕あげて去りゆくに角まがるときもう一度上ぐ
   酒飲めば中学時代に戻るらし姉との差を言ふ四十六歳
   夫には思ひ及ばぬ子と母のほんのひととき夏の優越
   美味きもの食べさせ食べ家族らは寄りきてこの世のきづな確かむ
   瞠きて大竹しのぶの熱唱す「とうちやんのためならエンヤコラ」
   テレビ消ししのち目閉づればきこゆなりヨイトマケの歌いまもきこゆる
   子ら去りて山のやうなる濯ぎもの抱へてあるにスマホ見せに来ぬ
   両腕に濯ぎしタオルケット掲げいま忙しいとわれは告げたり
   わかりをると夫は言ひ言ひ孫からのラインをちらちらわれに示せり
   短夜をあはれみたらむスズムシははがねの翅を擦り合はせ鳴く
   四ひきの雌四ひきの雄みるみるにゴキブリ大とならむ勢ひ
   二ひきづつ組となるらしかつをぶしを入れしボトルの蓋に乗りゐて
   スズムシの話ばかりに明け暮れてことしの夏も後半に入る
   『富士日記』読みて笑ひて日に幾どしみじみとして一人をおもふ
   ゲイシャネズミと武田百合子の言ふねずみ芸者のやうな手を持つならむ
   ただ過ぎにすぎゆくものと言ひしこと百合子の如く夏も去ぬめり
   一歳ちがひの友とむきあひ笑ひあふ朝のプールに足上げながら
   いづれ逝くところにてまた笑ひませう犬つれて虹の麓にあはむ
   無花果のたかき梢はくれなゐに実の熟したり採るひとなしに
   剪られずにぐんぐん伸びてゆくものよ天をこそめざせ無花果の木よ
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いつもながらの村島さんの精細な観察の行き届いた一連である。
ご家族の日常が彷彿とするように思えて、微笑ましい。
ご恵贈ありがとうございました。
どうぞ、お健やかな越年ください。





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