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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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冨上芳秀の詩「骨拾い」ほか・・・木村草弥
とかみ_NEW

──冨上芳秀の詩──(8)
   
       冨上芳秀の詩「骨拾い」ほか・・・・・・・・・・・・木村草弥
                  ・・・・・・「詩遊」No.65/2020Winter掲載・・・・・・

冨上芳秀の詩を読むのは面白い。冨上芳秀氏の突飛もないプロットが秀逸である。
この冊子には同氏の作品が三篇収録されているが、その中から二つ紹介する。

         骨拾い    冨上芳秀

棉の実がはじけると真っ白い綿が白い花のように見えます。棉は二
度花を咲かせるのですと、真っ白い髪を風になびかせて女はすっく
と前を見つめています。闇の中に綿帽子を被った花嫁が緊張した面
持ちで座っていました。女の真っ白い肌の奥を流れる真っ赤な血脈
の流れる岸辺で、女は男の白濁した夢を受け入れたのです。遠く深
い昔につながる心臓がどくんどくんと規則正しく脈打って男の血脈
をつないでいました。春になって満開のサクラの花の下で、柔らか
いまるまるとした赤ん坊を抱いて女は乳を飲ませています。夏に
なって、真っ青な海辺では少年と少女が褐色の肌を焦がして、波と
戯れながら泳いでいました。気が付くと木々は赤や黄色に色づき、
淋しさがはらはらと落ちているのでした。あれからどれだけの春や
夏が過ぎていったことでしょうか。とうとうこんな淋しい秋の林の
まっただ中に一人で立ち止まっている自分を女は見つけました。休
む間もなく働き続けけたことを思い出している内にも容赦なく、季節
は過ぎていきます。女は誰もいない林間で、薪拾いをしているので
す。冬がもうすぐやってくるので、そのための支度をしなければな
りません。空から白いものが降ってくるのを女は見上げました。あ
の男も、あの赤ん坊も、あの子供たちもどこへ行ってしまったのだ
ろう。移りゆく季節の中で姿を見失ってしまったのです。女はまた
薪を拾おうとして、それが真っ白い骨であることに気が付きました。
茶色い薪は、みんな懐かしい人たちの思い出の破片だったのです。
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途中までは「物語」的だなと思っていたら、終わりになって、見事なプロットとして屹立した。

もう一篇は、きっちり詰めた散文詩ではなく、「行分け」詩になっている。

     ナンセンスに巻いて登龍    冨上芳秀

鉢巻き、腰巻き、左巻き
この違いは何かなと考えると
巻くものと巻き方の違いだとわかる
鉢というのは頭のことで
頭を巻く布が鉢巻きである
だが
ここには意志がある
さあ、これから戦うぞ
がんばるぞという意志がある
腰巻きは色っぽい
赤い腰巻きがめくれて
むっちりと固く柔らかい太股が見えると
男たちは生唾を飲んで興奮する
左巻きというのは愚かな人のことだと
右巻きの人が非難する言葉である
伊達巻き、海苔巻き、軍艦巻き
舌を巻く美味さ
巻いて巻かれて巻かれて巻いて
逆巻く波を乗り越えて
巻き舌の啖呵を切って
竜巻に乗って
龍になる

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この号の「編集後記」も、詩になっている。 
終末は、こうなっている。
<▼種まく人は孤独である。権兵衛がまきゃ、カラスがほじくる。巻いた種は刈らねばなりません。
 まいてもまいてもカラスがほじくるので、権兵衛は刈り取ることはできません。権兵衛は永遠に種をまいています。
 カラスは永遠にほじくっています。種まく人はさびしい。>

今号は、言ってみれば、いつものような奇抜なプロットの「冴え」が少なかった、と言えるだろうか。
それでも、いつもながらの「冨上ぶし」を堪能させてもらった。
ご恵贈有難うございました。        (完)


      
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