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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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内田正美詩集『野の棺』・・・木村草弥
野_NEW

──新・読書ノート──

     内田正美詩集『野の棺』・・・・・・・・・・・・・木村草弥
             ・・・・・・澪標2020/03/10刊・・・・・・・・・

内田正美 略歴
1956年 兵庫県生まれ
1978年 香川大学農学部卒 
2011年 詩集『光降る街』 澪標
2015年 かなざわ現代詩賞 最優秀賞
「ア・テンポ」 「時刻表」 「風の音」 同人

内田氏は私には未知の人である。
版元である澪標の松村信人氏から送られてきた。

「帯」に たかとう匡子が書いている。
それによると内田氏は「牛飼いの牧場主」だという。
この「帯」文は多分にたかとう氏のセンチメントで書かれていると思うが、ここでは触れない。

題名になっている詩の一連を引いてみよう。

     野の棺     打田正美

   光のくる一点にわたしのこころは向かうが
   わたしの体は闇へはげしく曳かれている
   丘の上
   林の中に古墳がある
   木々の中に黒々とした岩肌が露出する
   その下に岩を組んだ石室と巨岩の棺の蓋
   地への深い刻印は
   富める者の権力のあかし
   冷たい岩肌に囲まれた 息苦しく狭い空間に
   埋められて長い時を眠った
   朽ち行く骸 さみしい魂
   勾玉 剣と馬具はすでに赤さびて
   時の風にさらされている
   死はいつだって心さみしい
   そこにいる nobody
   風化し続けるこころの叫び
   それはわたしの虚構
   わたしの先祖の消えていった闇
   魂は考古学者のゆめと入れかわり
   安らかな眠りにつく
   まだ見ぬ何者かによって
   蒼く蒼い空深く埋められて

   (生者は・・・        聖者 )
   古墳の林を下りると
   畑と住宅が広がっている
   かすかに聞こえる 建設の槌音
   チロチロと水の流れは住宅地へ下る
   風の中にも子供達の声がする
   水は小川となり流れ
   生まれくるいのちと
   死するいのちの
   あわくまじわる地の上で
   はてしない神々の無音の祝祭

   夜 窓辺に灯がともる
   天に輝く星座が移動をはじめる
   音もなく開いたパソコンがたちあがり
   カチ カチャ
   キーボードが鳴りはじめる
   (こんにちは
    わたしのことばたち・・・  )
   花として 種子として 棺にのせて
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多分に「予定調和」的な詩作りが見られるが、古墳のある風景は描写できているだろう。
現代の「牛飼い」というのは、苦しいもので、決して牧歌的なものではない。
農業にも言えることである。

この詩集には全部で二十五篇の作品が収録されている。
その中から作者の「身すぎ世すぎ」が、かいま見られる一篇を抄出する。

       詩の余白に墜ちる    打田正美

   秋は美しい季節
     ・・・(中略)・・・
   時だってとまる
     (永遠てあるの  )
   牧舎のすみ 野鼠が死んでいる
   餌の中の麦とトウモロコシに混ざって牛の臼歯が
   落ちている
   汚れた牛がいったりきたり
   畑ではキャベツの苗が植えられ大根の種が播かれる
   雀が死んでいる
   子芋が掘られる 稲刈りがはじまる
   いなご死んで干からびでいる
   蝉声はとうに聞こえない
   おびただしい生の残滓
   おびただしい死のにおいをはこびさる風
   ながれいく粒子 不変なんてどこにもない
   生れてすぐに死ぬ はたらくと言うつまらない宝物
      (そうかな)
   私たちが獲得した不思議ないのちの不本意な死
   種をまく いずれ収穫
   平凡な日常のためらいのない刃
   生きる為に殺し 殺されることで生きる
      ・・・(中略)・・・
   チラチラとこもれ日あびて 小さな体をよこたえている
   意識はうすれる
   力なく青い空をみている
   カラスが気づいた ぼくをみている
     ・・・(中略)・・・

   地に帰って行った仲間
   行方しれずの家族のこと
   土のにおい
   ざわめく生も遠ざかる
   蒼い空が下りてくる
   それからひとり
   だれもみることのない
   夢をみる
------------------------------------------------------------------
全篇を通じて「死」という言葉が使われるが、使い方としては的確だろう。
決して明るい詩ではないが、われわれの「生」なんて、そんなもんである。
その点では、私も納得する。
まだまだ引きたい作品があるが、この辺で終わりたい。
受賞の栄誉に輝いた作者の今後に栄光あれ。     (完)




      
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