
砂浜にひと叢(むら)さかる豌豆は
縋るものなし 虚空に蔓を・・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
この歌は私の第一歌集『茶の四季』(角川書店)に載るものである。
「浜豌豆」は海岸の砂浜に生える草で5月頃から見られるようになる。日本は縦に長いから北へゆくほど遅い時に見られる。
どうも日本の固有種らしく、学名はLathyrus japonicus という。白と紫の可憐な花である。
名前の通り、マメ科の多年草で海岸に生える。丈が50センチほどになるというが、その海岸の風その他の条件によって異なる。
先は蔓になるのは、私の歌の通りである。
砂浜の植物は、潮の波打ち際には生えない。いくらか離れたところに叢を作るようにかたまっているのが通常である。
何ら縋るものがないので、私は「虚空に蔓を」と表現してみた。それは私自身の心象の表白でもあろうか。
写真②は、その実である。

その可憐さを愛でられて俳句にも詠まれているので、それを引いて終わる。
はらはらと浜豌豆に雨来たる・・・・・・・・高浜虚子
礁の上にいつく神あり浜豌豆・・・・・・・・富安風生
浜豌豆雨はらはらと灘光る・・・・・・・・角川源義
風落ちしとき松籟す浜豌豆・・・・・・・阿部みどり女
夕日荒く浜豌豆に尾を引けり・・・・・・・・大野林火
役立たぬ蛸壺隠し浜えんどう・・・・・・・・藤田美雄
海光に牛踏み荒らすはまゑんどう・・・・・・・・庄司とほる
浜豌豆陽にも風にも砂丘動き・・・・・・・・野沢節子
遊子あり浜豌豆のむらさきに・・・・・・・・森田峠
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