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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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照屋眞理子句集『猫も天使も』・・・木村草弥
照屋_NEW

──新・読書ノート──

        照屋眞理子句集『猫も天使も』・・・・・・・・・・・木村草弥
                 ・・・・・・角川書店2020/07/15刊・・・・・・・・・

この本が贈られてきた。照屋さんは昨年七月十五日に亡くなられた、という。ご夫君の手による遺句集ということである。
私は著者のことは何も知らなかったのだが、第三歌集『恋』が角川書店から送られてきて、私は → 照屋眞理子第三歌集『恋』書評を、2013/04/29に、このブログに書いた。
詳しくは当該「書評」を見られたい。リンクになっている。
私は一昨年、終活の意味も込めて蔵書を、すべて「日本現代詩歌文学館」などの図書館に寄贈したので、照屋さんの本も今は私の手元には無い。
残っているのは先に挙げた拙ブログの記事だけである。
いま読み返してみると、ネット上に載る記事などを引いて、よく書けていると思う。

照屋眞理子さんは、こういう人である。
1951年生まれ。成城大学文芸学部卒業。句誌「季刊芙蓉」代表。塚本邦雄氏に短歌俳句を学ぶ。
1980年サンデー毎日代表現代百人一首塚本邦雄賞、1981年短歌研究新人賞次席。
歌集『夢の岸』、『抽象の薔薇』、『夢』。 句集『月の書架』、『やよ子猫』。

画像でも読み取れると思うが、書評家として名高い東郷雄二氏が 7ページに及ぶ「序文」を書いておられる。
また、「玲瓏」同人である尾崎まゆみ氏が「時の流れ」レール・デュ・タン と題して2ページの文章を書いておられる。
   〈時の流れ〉終の一滴馨りたち掌上軽し一壜の虚無   第一歌集『夢の岸』所載
この歌は、いかにも才女だった照屋眞理子さんの歌らしい才気煥発の作品であり、塚本邦雄「玲瓏」門下らしいもので、この歌を選択された尾崎まゆみ氏の手腕に感嘆する。
リンクに引いた私の書評にも書いた通り、私は彼女の作品に詳しくはなく、贈呈された本を通じて知るのみである。
まして私は俳句は作らない一介の素人であるが、少し句を引いてみたい。

この本は、伝統的な「部立て」に従って編集されている。
「目次」を引いてみよう。

序       東郷雄二
虹二重




新年


十五分
時の流れ     尾崎まゆみ

「虹二重」の章は、「季刊芙蓉」120号(最終号)令和元年六月に載る一連である。

     サンタ・マリアマリア風光る

     春浅し束ねて細き母の髪

     陽炎に置かむと母を連れ出しぬ

     ちりめんを猫とわけあふ朝餉かな

     握つてはだめ桜貝こはさぬやう

     春は曙ちかぢかと猫の鼻

     こんな日に遺言書かなむ山笑ふ

     かの世かも知れぬ目覚や大朝寝

     大瑠璃の声降る朝や神います

     信ずれば起こる奇跡や虹二重

全句を引いてみた。この一連は主宰される俳句結社「芙蓉」を休刊される際のものであるから、作者の想いが籠っていると言っていいだろう。
彼女がクリスチャンかどうかは知らないが、「サンタ・マリア」という呼び掛けは無信心の者は、先ずしないのではないか。
「こんな日に遺言書かなむ」とかいう措辞も示唆的である。彼女は恐らく体調不良から「神の恩寵」を求めていたのではないか。私にはそんな遺書めいた表現に見える。
以下、俳句には素人である私の目に止まった句を列挙して終わる。

     忘れずよ父を送りし日の春泥

     立春大吉けふの地球の踏みごこち

     たらちねの歩幅小さき犬ふぐり

     生死何とも知れぬものなり桜東風

     ばか野郎こんな若葉の日に逝くな

     夕焼がきれいとそれだけの電話

     またの名は蛍この世を夢と言ふ

     江ノ電は水母に逢ひに行く電車

     御器齧眞砂女苦手と囁きぬ

     黒猫を入れて全き木下闇

     コクトーの耳がここにも夏逝く日

     リルケヘッセ漱石太宰休暇果つ

     夕星や芙蓉はけふを閉づるころ

     母刀自やさやかに子の名忘らるる

     少年の躰よく寝る神の留守

     蛍田といふ駅木枯に灯る

     たたまれて褻に帰りゆく金屏風

     ヨゼフてふ父のかなしみクリスマス

     パン種の寝てゐる隙を毛糸編む

     北風のロヘルとシャヘルよく笑ふ

     猫どちは猫の御慶の鼻寄せて

     楽浪の滋賀にもとほる絵双六

     アスパラガスみどり二十歳の恋もまた

     湯たんぽや斯く母も母恋ひにしか

     雪女郎恋して溶けてしまひけり

     師系塚本邦雄柘榴を火種とし

そして、巻末の一句は、これで畢っている。

     わたくしを捨てに銀河のほとりまで

才気煥発な一生(よ)を照屋眞理子さんは、自在に、かつ賢明に、猫と共に生き抜かれた。お疲れさまでした。ゆっくりとお休みください。
ご恵贈に感謝いたします。有難うございました。                (完)



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