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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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細見和之詩集『ほとぼりが冷めるまで』・・・木村草弥
細見_NEW

──新・読書ノート──

       細見和之詩集『ほとぼりが冷めるまで』・・・・・・・・・・・・木村草弥
               ・・・・・・澪標2020/08/01刊・・・・・・・・

細見氏は季刊詩誌「びーぐる」の山田兼士など四人の編集同人の一人である。
Wikipediaに載る経歴を下記しておく。

細見 和之
(ほそみ かずゆき、1962年2月27日 – )は、日本の詩人、京都大学教授、大阪文学学校校長。専門はドイツ思想、特にテオドール・アドルノ。
兵庫県、現在の丹波篠山市生まれ。丹波篠山市在住。兵庫県立篠山鳳鳴高等学校、大阪大学文学部卒業、同大学院人間科学研究科博士課程満期退学。2007年「アドルノの場所」で大阪大学から博士(人間科学)。
大阪府立大学講師、助教授、教授を経て、2013年5月より自分の詩に曲を付けはじめるとともに、高校時代のバンド仲間とtheチャンポラパンbandを結成、丹波篠山市を中心に大阪でもライブ活動も行ない、ソロでの展開をふくめて活動を模索している。2014年から大阪文学学校校長兼任。2016年4月から京都大学大学院人間・環境学研究科総合人間学部教授。

著書
単著
『沈むプール――詩集』(イオブックス, 1989年)
『バイエルの博物誌』(書肆山田, 1995年)
『アドルノ――非同一性の哲学』(講談社, 1996年)
『アイデンティティ/他者性』(岩波書店, 1999年)
『言葉の岸』(思潮社, 2001年)、第7回中原中也賞候補
『アドルノの場所』(みすず書房, 2004年)
『言葉と記憶』(岩波書店, 2005年)
『ポップミュージックで社会科』(みすず書房, 2005年)
『ホッチキス』(書肆山田, 2007年、第13回中原中也賞候補)
『ベンヤミン「言語一般および人間の言語について」を読む――言葉と語りえぬもの』(岩波書店, 2009年)
『「戦後」の思想――カントからハーバーマスへ』(白水社, 2009年)、第7回日本独文学会賞
『永山則夫――ある表現者の使命』(河出書房新社, 2010年)
『家族の午後――細見和之詩集』(澪標, 2010年)、第7回三好達治賞受賞
『ディアスポラを生きる詩人 金時鐘』(岩波書店, 2011年)、第3回鮎川信夫賞候補
『闇風呂』(澪標, 2013年)
『フランクフルト学派』(中公新書, 2014年)
『石原吉郎――シベリア抑留詩人の生と詩』(中央公論新社, 2015年)
『「投壜通信」の詩人たち <詩の危機>からホロコーストへ』岩波書店、2018

私は『家族の午後』や『「投壜通信」の詩人たち <詩の危機>からホロコーストへ』などを読んだことがある。

細見さんの詩は何も難しいことのない身辺に取材したものである。
今回の本には全部で28編の作品が載っている。
その中から二つの作品を引いておく。

       宴のような時間──三井葉子さん追悼

  王朝風の美人
  それが三井さんから
  誰もが受けていた印象でした
  私が大阪文学学校に入学したとき
  あでやかな和服姿の三井さんがいらして
  金時鐘さんがあろうことか
  「三葉虫 ! 」などと声をかけられると
  三井さんがキッと睨まれて
  川崎彰彦さんがアハハハと笑ってらした
  それは、それは、美しい宴のような時間でした
  海外に長期滞在したことのない私にとって
  思えば文学学校は留学先でした
  ドイツ語が話されるのでもない
  フランス語が話されるのでもない
  けれども、普段とは違う日本語がたえず飛び交っている
  かけがえのない別世界──
  三井さんもそこで
  私が聞いたことのない日本語を話されていました
  私が読んだことのない日本語を書かれていました

  三井さんが亡くなって
  あらためて気づいたことがふたつありました
  三井さんの第一詩集『清潔なみちゆき』が一九六二年
  私が生まれた年に出版されていたこと
  そして、三井さんの本名が「幸子」であったこと
  三井さんは幸子というもうひとりの女性をひそめて
  私が生きてきただけの年月
  詩を書いてこられたのでした

  ──それかって一瞬のことや
  三井さんはきっとそう言われるでしょうね
  三井さん
  ひとの結びつきは難しい・・・・・
  ですね
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三井さんと少しだけ関わりのあった私として、この詩を引いておいた。

        夕暮れは不意に訪れて

  以前、家族座という詩を書いた
  私と妻、ふたりの娘が目に見えない力で挽き合って
  ひとつの星座を象っているイメージ
  近くで父母の星があることを私は想定したいなかった

  父が亡くなって
  母と妻の折り合いが悪くなった
  私と妻のあいだで口喧嘩が絶えなくなった
  娘たちは大好きだったクラブをやめた

  父の引力が全体を引き締めてくれていたのか
  アインシュタインによれば
  そもそも引力とは時空の歪みに過ぎないのだが・・・・・

  家族の夕暮れは不意に訪れるものなのだ
  星は宇宙にちりぢりに散らばって
  どんな形だったかもう誰にも分からない
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細見さんの詩は極めて分かりやすいものだが、内面に詩情を湛えている。 
第7回三好達治賞を受賞した『家族の午後』も、そんな分かりやすい作品だった。
この本は版元の「澪標」松村信人氏からいただいた。 

  

 

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