
茶圃の施肥はじめむとする頃ほひは
三寒四温北風さむし・・・・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
この歌は私の第四歌集「嬬恋」(角川書店)に載るものである。
「寒」に入った寒さも、一本調子ではなく、強弱のリズムを刻んで進んでゆくものである。こういうのを中国の古人は「三寒四温」と呼んだ。
今しも暦の上でも「大寒」に入って、一年の中でも一番寒い時期になっているが、「三寒四温」のリズムを刻むのが普通である。

写真②が私たちの「木津川」沿いの「冬」の茶園の集団である。朝なので霜が降りている。
この茶園は玉露、抹茶原料の碾茶用の高級茶の茶園で「手摘み」である。
茶の芽が動き出す前の冬季に「寒肥」という油粕などの有機質の肥料を与える。
大半の肥料は晩秋から初冬にかけての「秋肥」の時期に与えてしまうが、その補助的な施肥である。茶の樹の場合には化学肥料は殆ど与えない。
特に最近は「有機栽培」ということが、やかましく言われるが、茶に関しては昔から魚粕や油粕などを与えてきた。これらの肥料は茶の樹を養うためのものである。
お茶は他の農作物と違って、茶の葉を摘み取るものであるから、茶の樹をしっかり生育させなければならない。
「三寒四温」を詠んだ句は多くはないが、それらを引いて終る。
凍てつぎて四温たまたま石蕗の濡れ・・・・・・・・飯田蛇笏
軒しづく頻りに落つる四温かな・・・・・・・・・・白 樹
三寒の心小さく炭をつぐ・・・・・・・・・・洲 風
藁かごに乳のみ児あそぶ四温かな・・・・・・・・・・青水草
三寒の日は蒼かりし山おもて・・・・・・・・・・三宅一鳴
白珠の四温の星のうるむなり・・・・・・・・・・白葉女
胎中の胎児三寒四温越ゆ・・・・・・・・清水基吉
三寒四温ゆゑ人の世の面白し・・・・・・・・大橋越央子
三寒の四温を待てる机かな・・・・・・・・石川桂郎
雪原の三寒四温浅間噴く・・・・・・・・相馬遷子
四温の日低き歓語の碁石たち・・・・・・・・吉田銀葉
三寒のくらがりを負ふ臼一つ・・・・・・・・八重津苳二
父の日の花買ひに出し四温かな・・・・・・・・細田寿郎
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