
地の意思を空に刻みて冬木立つ・・・・・・・・・・・・・・馬場駿吉
この馬場駿吉の句をコラージュとして借用して、私は
<地の意思を空に刻みて冬木立つ>男ごころと言ふべし 冬木・・・・・・・・・・・木村草弥
*馬場駿吉
という歌を作ったことがある。もちろんコラージュであることを示すために *馬場駿吉 と明記してある。
馬場は名古屋市立大学病院の教授で医師であったが今は名誉教授で耳鼻科を専攻した、前衛的な俳句作者としても著名な人である。
馬場の句は「地の意思」を「空に刻み」という立体的な句作りが独特である。
このような他人の作品を、歌なり句なり詩の中などに取り込むのを「コラージュ」という。
私の歌も、それを採用している。
この歌は私の第四歌集『嬬恋』(角川書店)に載るもので、「阿音の形而上学」という13首からなる一連の中の一首である。
冬のきびしい空気の中に立つ冬木に「男ごころ」を読み取ったというのである。
「冬木」という冬の季語には、冬の間の、息をひそめたような木々を表わすものがあるのである。
以下、少し冬木の句を引いて終りたい。
大空にのび傾ける冬木かな・・・・・・・・高浜虚子
冬木中一本道を通りけり・・・・・・・・臼田亞浪
夢に見れば死もなつかしや冬木風・・・・・・・・富田木歩
つなぎやれば馬も冬木のしづけさに・・・・・・・・大野林火
その冬木誰も瞶めては去りぬ・・・・・・・・加藤楸邨
わが凭れる冬木ぞ空の真中指す・・・・・・・・八木絵馬
みちのくの夕日あまねき冬木かな・・・・・・・・五所平之助
猫下りて次第にくらくなる冬木・・・・・・・・佐藤鬼房
冬木伐り倒すを他の樹が囲む・・・・・・・・武藤不二彦
大冬木鹿の瞳何にうるほふや・・・・・・・・松野静子
冬木の手剪られ切り口鮮しき・・・・・・・・稲垣きくの
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