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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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橋爪さち子詩集『乾杯』 『薔薇星雲』 『愛撫』 『葉を煮る』・・・木村草弥
橋爪①_NEW
 ↑ 橋爪さち子第三詩集 第17回「詩と思想新人賞」受賞副賞として2008/11/30刊
橋爪③_NEW
↑ 橋爪さち子第四詩集 2012/06/20刊 
橋爪②_NEW
 ↑ 橋爪さち子第五詩集 コールサック社2015/10/15刊
橋爪④_NEW
↑ 橋爪さち子第六詩集 2018/10/25刊  記載のない本は、いずれも土曜美術社出版販売刊

     橋爪さち子詩集『乾杯』 『薔薇星雲』 『愛撫』 『葉を煮る』・・・・・・・・・木村草弥

橋爪さち子さんは付き合いのない未知の人だったが、私のブログ本などを買い求めてくださり手紙をいただいた。
そのことは昨日付けのブログに書いた。有難うございました。
そこで御礼とお返しにと彼女の本をアマゾンから古書で取り寄せた。
いずれも安価だが新本同様の本である。
なお著書として、これらの本の前に
詩集『時はたつ 時はたたない』 1986年
   『光る骨』 2002年       があることを書いておく。
「青い花」同人。日本現代詩人会、日本詩人クラブ、関西詩人協会 各会員
ネットを検索すると「国民文化祭わかやま2021」の投稿詩の審査員のところに名前が出ている。

彼女は「生年」などを一切書かない人であり、年齢などは判らない。京都府生れとだけ書いてある。
(追記) この記事を読まれて、本人からのメールで1944年生れ、とのことである。念のため付記しておく。
最近は歌人でも女の人で、こういう姿勢を採る人が多い。
「文芸表現者」は自分の作品を「見てもらいたい」願望から出発しているのだから、半ばカミングアウトしたような存在であるから、私なんかは、そういう態度には疑問を持つ。   
ただ凡その年齢は判る。これらの詩集の中で、繰り返して出てくる詩句に「父が十歳の時に四十歳で他界」したこと。「母が九十何歳」なんとか、という記述があるから若くはない。
 
詩作品を見てみよう。本の数が多いので、一冊につき題名を採られた詩を引くことにする。

乾杯』である。
こうしてスキャンすると黒くなってしまったが、題名の字などは「金箔」刷りであるから念のため。 

         乾杯

   私は老いた母を見舞った縁側で
   かさの薄くなった彼女をマッサージしながら
   ひとつの覚悟を思っていた

        ・・・・・・・・・・

   一九〇四年の七月 チェーホフは臨終の床で
   酸素吸入器の使用を拒否した 医師は何も言
   言わず大急ぎでシャンパンの用意をし チェー
   ホフとチェーホフの妻と医師は乾杯の辞なし
   の乾杯をした シャンパンなど実に久しぶり
   のことだな チェーホフはそう言ってグラス
   を空にし その一分後に呼吸を閉じた

       ・・・・・・・・・

   父の二倍の歳を生きた母は
        ・・・・・・・・
   降りそそぐ宇宙のいつくしみの
   万分の一のおこぼれを ただ
   心静かに享受する日びでもあるのだろう

   まるで陽光にささげる乾杯のように
   そのように
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薔薇星雲

         薔薇星雲

        ・・・・・・・・
   含羞
   ということばが脳をよぎった
   午後になると39度近い熱が出る日々の
   病巣とは無関係のわたしの胃は
   両手で伏せたいほど
   エロティックできれいだ

      ・・・・・・・・
   太い神経に居並ぶ内臓の群れのなか
   目眩がちな脳ばかりが滅入り焦り
   家に置いてきた星座図鑑の
   120頁を開けようとして
   届くはずのない腕を伸ばす

   NGC2237
   3600光年のかなた
   一角獣座 薔薇星雲の
   闇に萌える暗赤色の
   さみしい冷たさに触りたくて
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愛撫』  

        愛撫 

   太陽系を旅した小惑星探査機はやぶさは
   オーストラリアの草原の闇に
       ・・・・・・・
   小惑星イトカワのかけらを地球に運んだ

         ・・・・・・・・
   たぶんヒトは たぶんわたしは億年の昔
         ・・・・・・・
   宇宙に愛されたたった一日の記憶 その
   鮮やかな記憶の幻影に依って
   生きてみせるのかも知れない

        ・・・・・・・
   宇宙を抱きしめるように
   両の手で自分を抱きしめる
   胸のあわいの奈落あるいは暗黒がにおう

   小惑星イトカワは胃袋の形をしている                  
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葉を煮る

        葉を煮る

   十パーセント水酸化ナトリウムの水溶液に
   葉っぱを煮込み
   葉脈の栞をつくって
   無秩序な秩序に充ちた葉脈迷路を
   飽かずながめるのはすてきな作業です

        ・・・・・・・
   ──太古
   私は一本の樹でした
      ・・・・・・・
   神の坐する葉々を繁らせ
   枝々を太らせました

      ・・・・・・・
   すると 神は私を血染めの葉っぱにして
   人の肺腑に付着させたのです

       ・・・・・・・
   あの子に
   手作りの葉脈栞を渡したい
   私はありったけ夢中に手を突き出し
   突き出しました

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もっと作品を引きたかったが、お許しを得たい。
詩句の選択も的確で、詩才ゆたかな橋爪さんだと実感する。
若くはなくても、私なんかとはずっと若いから、これからも佳い詩を書いてもらいたいと思います。
鑑賞させていただき有難うございました。     (完)
  


        
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