
──村島典子の歌──(5)
早春の手紙・・・・・・・・・・・村島典子
つくづくと見よと朝のむらさきの横雲にゐる比叡向つ嶺
百年の山栗の下につどふとき小啄木鳥(こげら)たちまちかくれてしまふ
ちよつきり虫が落して散らす若書きの数葉があり枯芝のうへ
オトシブミとふ名前もらひし甲虫の青き葉つぱの早春の手紙(ふみ)
菱餅もあられもなきに雛の日にあはあは春の泡雪ふれり
びちよびちよとみぞれ降る昼雛の日の硝子のうちにわたしはありて
胸の疼痛いつときなれどいまたしか死者通りけり胸のうちがは
「おくりびと」見てのち通る法務局庁舎のまへに鶯のこゑ
納棺師といふ職あることのつつしみて身を伸ばしたり夜の小床に
草木のこゑきくべしと説きしひと 樹となりたまふ一年が過ぐ
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この一連の歌は、高松秀明主宰の歌誌「木立」140号2009/5の「招待席」に載る村島典子さんの作品である。
多くの歌誌、結社誌、同人誌などが毎月、または隔月刊で、或いは季刊で出されているが、
村島さんは、その才(ざえ)を愛されて、「寄稿」を求められたのである。
なお、この一連の最後の歌は昨年亡くなった師・前登志夫に捧げた歌である。
歌の数は少ないけれど、ここに載せておく。 ゆっくりと鑑賞されたい。
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