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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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鳥の樹と思ほえる日のにぎやかな小さき森でありしよ庭は・・・村島典子
晶0001

 ──村島典子の歌──(6)

     小さき森・・・・・・・・・村島典子

  半日をあふむきて聴くシンフォニー空をながれてゐるらしわれは

  ふかく目覚めて犬を思へり 犬は右耳を患ひをりき

  橋の上をぴよこぴよこ歩くハシブト 「この辺りの者でござる」

  花ゆれて夕暮あましこのくにを愛するものら野をわたりゆく

  雨に打たれ頭(かうべ)下げたる白薔薇を起せり人を抱へるさまに

  樹雨ふる軽井沢駅に立ちしときみづみづとせり指の先から

  わたくしは植物たりとつくづくと雨に濡るるをよろこぶ身体

  新緑のみどりの雨にぬれながら森の時間に針あはせたり

  見上ぐれば椽のさみどり雨の森千のこどもの潜めるごとし

  硝子のうちに雨が降りをり木もぬれて佇みゐたり直ぐなる一木

  朴苗木二本抜ききて木をさげて「あさま」車中に雫する友

  抗生剤ステロイド剤を処方され犬なれど食後つつましく服む

  耳治療に通ふわが犬診察台にみづから上がる耳洗ふため

  耳洗はれ恍惚となりしわが犬は力を抜きて瞑想したり

  ドアガラスに映りし犬とわたくしと硝子のなかに眼をあはせたり

  亡父もや生誕百年墓原にはらから集ふ二十五回忌

  ぶだう畑にぷだう実りぬ墓原の死者たち目覚むあまたの眼

  墓原にぶだう購ひこしわれらしみじみとしてぷだうの実を食ぶ

       向ひ隣の居住者替はり、三日の間に庭木ことごとく伐採さる。
  うかうかと昼寝せしまに声たてず伐られゆきにし槇と思へり

  動力鋸の音のみきこゆ壮年の木も逆らはず伐られたりけり

  木は動けず伐られゆくほかなきものを手斬りあし斬り胴体を斬り

  鳥の樹と思ほえる日のにぎやかな小さき森でありしよ庭は

  伐採されし庭の木々たちわたくしに森なればいま森消え失せし

  十年の歳月春夏秋冬を語りかけきつ窓をひらきて

  木々こそはわれのはらからまつさきに小鳥も歌ふ春のはじめは

  ある秋は雀蜂の巣見せくれし主も失せにけり雨のむかうに

  黐の木に夕日およびし荘厳も夢幻なりしかひと日の果ての

  真裸の家にとまどふわが窓のまむかふところ家のみ残る

  古の人にわれあれや壊す人を呆然とみてひと日暮れたり

  手足払はれ胴体切られ木は失せぬ雨の日暮の涙さうさう

  根こそぎにされし庭木々梅雨の雨凄まじく降る三日の間

  こんなにも小さき地面でありけるを十数本は森を生(な)しゐき
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この一連、耳の治療をする犬と言い、隣家の庭の鬱蒼とした立ち木が伐採されたこと、と言い、村島さんの心象に迫る佳い作品である。
こういう心に残る作品に接すると「文芸とは、いいものだなぁ」という気がするのである。
感謝して、ここに紹介しておく。
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