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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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大高翔句集『17文字の孤独』・・・・・・・・・・・・・木村草弥
17文字の孤独

 ──新・読書ノート── 

   大高翔句集『17文字の孤独』・・・・・・・・・・・・・木村草弥

新聞を読んでいて、大高翔という若い俳人の作品を読んだので、ネット古本屋で、この句集を手に入れた。
同時に、これは新本で『キリトリセン』という句集も買ったので、後日これについても書きたい。
大高翔は1977年徳島生まれ。お母さんが俳句結社を主宰しているらしく、子供の頃から俳句に親しみ13歳から句作を始めたという。
高校卒業時に第一句集『ひとりの聖域』を出したというが、これは手に入らなかった。
高校卒業後、上京して立教大学文学部に入学。20歳で、ここに紹介する第二句集『17文字の孤独』(角川書店1997年刊)を上梓した。
NHK-BSの俳句番組の司会などを経て、現在は毎日新聞まいまいクラブ「ケータイ俳句写真」選者。西武鉄道「秩父・川越でんたび大賞」審査委員長。徳島新聞の中高大生の俳句コーナー選者を務める。

この句集は、先に紹介した通り、20歳のときの句集だから、青春まっただ中の作品として、若さと恋の悩みなどを詠んでいる。文学作品というのは「虚構」であるから、虚実取り混ぜたものと理解するのが前提であるから、この句集の作品すべてをリアルとして捉えるつもりはないが、瑞々しい若者の感性に満ちた、よい句集である。
では、先ず私の好きな句をいくつか引いてみる。

 八朔柑背のびをしても見えぬ未来

 春浅し泣きだすようにモーニングコール

 春の行方坂かけのぼる荒息に

 春の窓ふいて故郷に別れ告ぐ

 春愁のままに十指の爪を染め

 ぶらんこ漕ぐ胸の矛盾を波立たせ

 夏の手紙青いにじみは海の色

 まぶしいほど恋の予感の夏帽子

 薄暑のベンチ待つひとのなく足を組む

 ひきとめてみたい背中に青嵐

 聖五月コーヒー色の肌つかむ

 成熟へ満ちゆく恐さ五月闇

 ひとを恋うみじんに刻むパセリほど

 コーラ飲むふたり微妙な距離のまま

 夏帽子逃げるわたしをつかまえて

 鏡のなかへ投げだす傷ついた素足

 Tシャツのはりつく背中西日さす

 夏の海ことばが欲しいたった今

 十九歳秋空に名を刻みたし

 十六夜ひっくりかえすおもちゃ箱

 危ういかもしれず言葉は海の雪

 Vネックセーター君の胸に風

 思い出は発作のように雪時雨

 奪いたくとも奪えないもの風花舞う

 雪景色飢えてるまんなか軋みだす

 自己肯定ぬるいココアを飲み込んで
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  猫の鈴鳴る新緑の木を登り

 シャム猫のようにまどろむ夏座敷

 猫やせて無言は重し秋暑し

 猫の背に降りおちていく秋の光

 死んだように眠る猫いて月の舟

 老猫の眠りは深く夜の吹雪
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作者は猫好きらしいので、終りに猫の句を6句引いておいた。

この句集の「あとがき」に、彼女は、こう書く。

<ことばなんて、簡単にあふれて、簡単に忘れられていく。
 だからこそわたしは俳句と向き合って、自分のまんなかの未だ埋まらない空白に書き込む決定的な ことばを探している。>

若いけれども、俳句作家として、彼女は、一番大事なところを、ちゃんと捉えている。

この頃の師匠は青柳志解樹らしい。この句集の「解説」で、こう書く。

<大高翔の俳句は詩である。青春のリリシズムはもとより、現実感に溢れているのは、自分の“いま”をうたうからである。彼女は言う。「言いたいのは、瞬間の感情の傷口です」。そしてまた「自分のこころが死なないように探してきた生きる場所が、いまのわたしにとって、俳句なのです」と。
 彼女に私は「葦」をイメージする。葦は春、強い芽を立て、若葦に生長し、青葦となって風にそよぐ。そして秋には大きな花穂をきらめかせるのである。冬の荒涼とした風景もこころに響く。それぞれ“いま”の風景である。
 最近、俳句は若い人たちに支持されるようになってきた。
 きっぱりと言い切る切り口の新鮮さが求められるのだろうか。>

この青柳の解説も的確で鋭い。
次の第三句集『キリトリセン』では、彼女の俳句は新しい展開を見せる。乞う、ご期待である。

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