
つちふるや日輪たしかに黄に変じ・・・・・・・・・・・・・山口素逝
「つちふる」を漢字で書けば「霾」となる。なんて難しい字だが、今でいう「黄砂」のことである。
昔は「黄沙」と書いたが、常用漢字では「砂」を採用している。
黄砂については今さら言うまでもないが、中国北部やモンゴルの砂塵が偏西風によって日本まで運ばれてくるもの。
朝鮮半島では、距離的に近いので、その被害もひどいらしい。学校が休校になったりするらしい。
「霾」の字は雨かんむりに狸という字がくっついているが、昔は古代中国ではタヌキが悪さをして、こんな変な天気になると信じられていたのであろう。
とにかく「黄砂」「霾る」というのが春の季語になっている。
例年、黄砂の襲来は五月になるとひどくなる。日によっては激しく降る日がある。黄砂アレルギーの人も出る始末である。
ところが今では、PM2.5というような微細な化学物質が降ってくるから始末が悪い。
中国では何でも金になることなら何でもするという風潮で、しかも地方政府や共産党の幹部が、そういう企業の幹部を兼ねているから公害として追及するのも妨害される。
マッチポンプのような形だから、日本でやられるように、裁判を起こして追及するというのも効果が無いことになる。
日本の公害のことを「反面教師」にして前に進んでほしいのだが、どっこい、こういう事情で期待薄ということになりかねない。
黄砂の句は多くはないが、少し引いておく。
青麦にオイルスタンド霾る中・・・・・・・・・・・・富安風生
真円き夕日霾なかに落つ・・・・・・・・・・・・中村汀女
つちふりしきのふのけふを吹雪くなり・・・・・・・・・・大橋桜坡子
幻の黒き人馬に霾降れり・・・・・・・・・・・・小松崎爽青
驢馬の市つちふるままに立ちにけり・・・・・・・・・・三篠羽村
霾ぐもり大鉄橋は中空に・・・・・・・・・・・・山崎星童
黄塵のくらき空より鳩の列・・・・・・・・・・・・鈴木元
鉢の蘭黄塵ひと日窓を占む・・・・・・・・・・・・水原秋桜子
黄沙濃し日冰輪(ひょうりん)となりて去る・・・・・・・しづの女
喪の列や娶りの列や霾る街・・・・・・・・大橋越央子
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