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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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鰤を起し雪を起してつづけざま・・・・・・・・・・・・・・・・・・三村純也
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  鰤を起し雪を起してつづけざま・・・・・・・・・・・・・三村純也

「鰤起し」とは12月、1月に鳴る雷で、ちょうど鰤の獲れる時期にあたり、漁師は呼んで「鰤起し」というのである。
寒冷前線の通過によって雷が発生し、一天にわかに掻き曇り荒天になる。こういう時に鰤が、よく獲れるというのである。
三村純也の句は、そういう海の状況を巧くとらえている。
「鰤起し」というのは、この雷が鰤を起して豊漁をもたらしてくれるという意味で、「雪起し」という言葉から転じたものであるという。
この句は、そういう意味で、両方の意味をも巧く捉えて表現している。

鰤というのは「出世魚」で、鰤という名前になるまでにいくつもの呼び方がある。
関西ではツバス(体長20センチ前後)、ハマチ(40センチ前後)、メジロ(60センチ前後)、ブリ(80センチ以上)と出世してゆくのである。
関東では、同じ大きさの魚をワカシ→イナダ→ワラサ→ブリ、となるという。
鰤は回遊魚であり、上に書いたように大きくなってゆきながら冬季を迎えて、海岸線に接近してくるのを大敷網で捕らえるのである。
この時期の鰤は脂が乗って極めて美味である。
鰤の大敷網のいい写真が見つからないので断念する。
脂の乗った鰤は醤油の照り焼きにしてもおいしいし、鰤と大根の煮付けなども冬の味覚である。

昔、私が少年の頃、敗戦後しばらくは「茶」も統制品で自由に売買できなかったので、お茶の取れない地方では茶に不自由した。
ある冬に富山県から大きな鰤をかついで「物々交換」で、はるばるやって来た人がいる。
こちらで鰤に見合う茶を買って帰って商売しようというのである。
私たちの方では、鰤なんぞは貴重品であるから何の異存もなく何がしかの茶と交換したようであり、その後のわが家のご馳走ぶりは、ご想像に任せよう。
鰤というと私は、先ずそういうエピソードを思いだす。

以下、鰤、鰤網ないしは鰤起しなどの句を引いて終りにしたい。

buri鰤本命

 佐渡の上に日矢旺んなり鰤起し・・・・・・・・岸田稚魚

 一湾の気色立ちをり鰤起し・・・・・・・・宮下翠舟

 隠岐の雲ただならぬあり鰤起し・・・・・・・・昆野草丘

 父祖の地の住み難しかな鰤起し・・・・・・・・今牧茘枝

 加賀太鼓乱れ打つなり鰤起し・・・・・・・・溝口青於

 鰤起しずしりと重き露伴集・・・・・・・・中西舗土

 千枚田暮れてとどろく鰤起し・・・・・・・・和田祥子

 鰤網を越す大浪の見えにけり・・・・・・・・前田普羅

 鰤起し杉山桧山色褪せぬ・・・・・・・・阿波野青畝

 鰤網や伊豆山権現波駆りて・・・・・・・・水原秋桜子

 鰤網に月夜の汐のながる見ゆ・・・・・・・・原柯城

 鰤網に縋る蟹あり夜明けつつ・・・・・・・・吉沢卯一

 鰤網を敷く海くらし石蕗の花・・・・・・・・水原秋桜子

 鰤敷や隣鰤場も指呼の中・・・・・・・・鈴鹿野風呂

 血潮濃き水にしなほも鰤洗ふ・・・・・・・・山口誓子

 鰤が人より美しかりき暮の町・・・・・・・・加藤楸邨

 二三言言ひて寒鰤置いてゆく・・・・・・・・能村登四郎

 大き手もて鰤つかみ佇つ老いし漁婦・・・・・・・・柴田白葉女

 鰤と蜜柑夕日どやどや店に入る・・・・・・・・小原俊一

 虹の脚怒涛にささり鰤湧く湾・・・・・・・・楠美葩緒

 鰤来るや大雪止まぬ越の岬・・・・・・・・・羽田岳水

 一閃のあと一喝の鰤起し・・・・・・・・山崎羅春

 能登の灯の今宵は見えず鰤起し・・・・・・・・堀流水子

 鰤起こし能登は夜すがら戸の鳴れる・・・・・・・・谷口順子

 鰤起し波の大きくめくれけり・・・・・・・・能勢ゆり


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