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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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西村美智子『無告のいしぶみ』・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
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──新・読書ノート──

   西村美智子『無告のいしぶみ』─悲謡 抗戦信長─・・・・・・・・・・・木村草弥                
                 ・・・・・・・新人物往来社 2009/02 刊・・・・・・・・・・・・

この本は、先に採り上げた沢良木和生と同じ同人誌「零」の会で一緒に競っていた人の小説である。
先ず、ストーリーを辿る意味からも、オンライン書店BK-1に載る書評を引いておく。
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戦国滅亡の民の栄光 (執筆者・摂津の国の住人) 2009/01/26 16:15:45

世に多くの歴史時代小説が送り出されていますが、この小説は珍しく勁烈な歴史小説だと思いました。
ときは戦国真っ只中、織田信長の暴虐と戦う長島一向一揆から、伊丹有岡城壊滅のころまでのほぼ二十年余の凄惨な戦いが描かれています。
中心は長島の戦いで結成され、一艘の川舟を巧みにあやつって信長軍を悩ます名も無き雑兵、若者5人の集団「阿ノ伍」とそのひとり吾市です。吾市ははるか遠くの物音を感じ、また見通すことができる特異な才能の持ち主ですが、生来の臆病者で戦うことが得手ではありません。そして彼は伍頭の憂愁に満ちた一向宗の戦士周作に、ある種の思慕を寄せています。
一揆はよく戦いますが、善戦かなわず信長の二万人虐殺によって壊滅し、「阿の伍」の仲間も吾市を残して劫火の中で死んでいきます。生き残った彼は石山本願寺を経て摂津有岡城へ潜行します。
やがて城主荒木村重は信長に反旗を翻します。城を包囲する信長軍による残忍な干し殺し作戦に苦しむ城内の領民たちと共に吾市は生きるのですが、長島で共に戦った阿ノ伍の仲間への想いが彼を支え続けるのです。
やがて領主村重は、城も一族も領民も捨てて逃亡し、残された武将たちは戦意を失って開城し、いずれかへ逐転します。最後まで戦って捕らえられた一向宗徒と市民たちは、茅舎に閉じ込められて悉く焚殺されます。
吾市も彼らと共に焼き殺されるのですが、最後に彼が見るのは、阿鼻叫喚の焦熱地獄ではなく、空高く昇華していく阿ノ伍の仲間と巨大となった川舟に乗る、火に取り巻かれた無数の無告のひとびとでした。このとき念仏の声が響き渡っているのです。

一方、この間の戦国角逐の状況、信長と傘下武将たちの息詰まる緊張関係などが凄まじく描写されています。また、なぜ村重は信長に反旗を翻したか、なぜ村重は逃亡したか、なぜのちに秀吉に仕えまた放逐されたか、が描かれています。またキリシタン大名高山右近はなぜ村重を裏切って信長についたか、また同郷の者たちが焚殺されるのにいかに苦しんだか、なども克明に描写されています。
その他、ものがたりのディテイルが史料をしっかりと掴んでけれんなく組み立てられ、引き締まった流麗な文体によって見事な世界を構築していると思いました。
最後に、村重の室陀子をはじめ一族ことごとく京都六条川原で首を打たれるのですが、その姿がまことに華やかで美しいのです。殺戮に次ぐ殺戮といってもよいほどの戦国無残の物語ではありますが、ここに描かれる死んでいったものたちは、すべて清冽で、けなげで美しいのです。
時代小説と申しましたが、これはむしろ、高い志で描かれた宗教小説といった方がよいのかもしれません。
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この本の作者・西村美智子は 、この本に載る略歴によると

<1931年生まれ。関西学院大学英文科卒、東京都立大学大学院英文学専攻修士。
 法政大学女子高等学校教諭、1997年定年退職。
 「零」の会同人。 日本シェイクスピア協会会員。
 著書『新釈シェイクスピア 神々の偽計』(近代文芸社)
 神奈川県在住。>

とある。

この本の「帯」文には

  <火あぶりを待つ民に
   光はいずこよりさし、
   いずこに導くか

    長島一向一揆で・・・有岡城篭城で・・・信長の皆殺し号令に抗した民のものがたり>

と書かれている。

先に引用した書評にも書いてある通り、この小説の中心人物は「吾市」で、作者によると架空の人だというが、この「吾市」という人物の設定が、この小説の縦糸としてストーリーを貫くものとして成功している。
この本の執筆に当っての参考文献も巻末に載っているが、よく読み込まれているようである。
私は謹呈されて、すぐ一読したが緊迫感を持った小説で一気に読ませる。
ただ、文体が、ぎっちり詰め込まれているという印象で、望むらくは、「間」(ま)が、言葉を変えれば「遊び」が、もう少し欲しい。
作者は英文学徒ということだが、資料にもよく当って、このような立派な小説を仕上げられたことに敬意を表したい。

ネット上で、例えばGoogleで「西村美智子」と検索すると、同姓同名の競輪選手の有名人が居て、その名前がわーっと出てきたりするが、この本はアマゾンも取り扱っているようで、すぐに買えるから一読願いたい。ユーズド本もいくつか出ている。

よい本を恵贈いただいた。 ここに深い感謝の意とともに、次作を期待したい。

終りに、『新釈シェイクスピア 神々の偽計』という本の写真を出しておく。

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(追記)この本も後日、恵贈されたので一読した。
シェイクスピアの四大悲劇から「オフィーリア賛歌」「マクベスの旗」「コーディリア刑死」「デスデモーナの恋」と題して、四篇を小説化されたものである。これらの初出も同人誌「零」に2001年から2002年にかけて発表されたものである。
「あとがき」によると、高校の英語教師を定年退職した後、その年の夏からケンブリッジ大学のシェイクスピアサマースクールに参加され、Dr.Cristopher Bristow のシェイクスピアを中心にした悲劇についての講義を聴講した。
講義に触発されて四大悲劇を、短編に出来ればと思った、と執筆動機を書いておられる。

私はシェイクスピアには疎いのだが、これらの作品も小説として成功しているだろう。
ご恵贈に感謝して付記するものである。有難うございました。


コメント
コメント
高槻・茨木の社寺には、信長の先兵となった高山右近に焼討された寺や、信長の信仰篤い牛頭天王社に名を変えて難を逃れようとした神社を多く見かけます。
妻子を見殺しにして生き延び、後に茶人となる村重の生きざまは、武将としてはどうかなとは思いますが、大変興味があり、一読したいと思います。
2010/01/30(土) 09:40:16 | URL | bittercup #- [ 編集 ]
そうなのですか。ぜひ一読ください
■bittercupさま。
お早うございます。
昨日は朝から終日でかけおりました。
そうなのですか。ぜひ一読ください。
「牛頭天王」というのは荒ぶる神です。
「庚申」さんというのは、それです。
「青面金剛」と言う別名もありますね。
「災いをもたらす」神で、そういう災いをしないでください、と祀ってお願いするのが「庚申」信仰だと言われています。
如何にも信長らしい信仰ですね。
私のHPの「庚申信仰」のところに少し関連の記事がありますので、ご参照ください。
2010/01/31(日) 08:02:33 | URL | sohya #- [ 編集 ]
コミューン
私は、プロレタリアのユートピア建設ともいうべきパリコンミューンが大好きなにで、一揆に心ひかれました。「無告のいしぶみ」をご紹介くださった木村草.jp <bittercup@live.jp>弥さまに感謝です。おなじくご紹介の「神々の偽計」は市場では「出品者」から扱いですので、差し支えなければ、michinishi@tmtv.ne.jpまでご住所をお知らせいただければbittercup@liveさまに「神々の偽計」贈呈もうしあげます。木村草弥さまと、bittercup@liveさまのブログを拝見し、新しい地平が開けて行く思いです。西村美智子
2010/02/01(月) 04:01:18 | URL | 西村美智子 #SE/5kQJw [ 編集 ]
■西村さま。
お早うございます。
返信は詳しくはメールで書きました。
2010/02/01(月) 07:00:58 | URL | sohya #- [ 編集 ]
興味津々
小泉首相の頃だろうか、信長が「良きリーダー」の代表のように取り上げられ不思議に思ったことがあります。信長が中心に取り上げられることの多い中、信長に抗した人々の物語ということで、たいへん興味があります。無告の民、吾市は、どのような世界を見せてくれるのか。是非、西村氏の作品を読んでみたいと思いました。
2010/02/01(月) 20:21:57 | URL | 助左右衛門 #- [ 編集 ]
アマゾンで買えますから、ぜひお取り寄せを
■助左右衛門さま。
コメント有難うございます。
アマゾンで買えますから、ぜひお取り寄せを。
2010/02/02(火) 07:32:22 | URL | sohya #- [ 編集 ]
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