
舞へ舞へかたつぶり、
舞はぬものならば、
馬の子や牛の子に蹴させてん、
踏みわらせてん、
まことに美しく舞うたらば、
花の園まで遊ばせん・・・・・・・・・・・・・・・・ 『梁塵秘抄』
蝸牛かたつむりは陸産の巻貝で、でんでんむし、まいまい、とも言われる。
関東地方の森や野に多いのはミスジマイマイで殻の直径が3.5センチ、2センチほどの高さで黒っぽい三本の帯斑がある。
暖かくなると活動をはじめ、農家にとっては農作物を害するので困り者である。
いろいろの種類があり、ヒダリマキマイマイは貝殻を前から見て口が左にあり、黒い帯は一本である。
他にクチベニマイマイ、セトウチマイマイ、ツクシマイマイなどがよく見られる種類だという。
大きいのはアワマイマイで四国の山地に居る。
雌雄同体だが、交尾は別の個体とする。

写真②はオトメマイマイという名前らしい。かわいい小さい種類である。
童謡に歌われる「角」というのは「目」である。突くとひょいと引っ込める。
芭蕉の句に
かたつぶり角ふりわけよ須磨明石
というのがあるが、この角というのも、もちろん目であり、古来、角──争う、という連想から詠われたものが多い。どこか遊び心の湧く季語だったようである。
古句を引くと
蝸牛の住はてし宿やうつせ貝・・・・・・・与謝蕪村
蝸牛見よ見よおのが影法師・・・・・・・・小林一茶
などがある。明治以後の句を引いて終わりたい。

蝸牛(ででむし)の頭もたげしにも似たり・・・・・・・・正岡子規
雨の森恐ろし蝸牛早く動く・・・・・・・・高浜虚子
蝸牛や降りしらみては降り冥み・・・・・・・阿波野青畝
やさしさは殻透くばかり蝸牛・・・・・・・・山口誓子
あかるさや蝸牛かたくかたくねむる・・・・・・・中村草田男
蝸牛喪の暦日は過ぎ易し・・・・・・・・安住敦
蝸牛いつか哀歓を子はかくす・・・・・・・・加藤楸邨
蝸牛遊ぶ背に殻負ひしまま・・・・・・・・山口波津女
蝸牛や岐れ合ふ枝もわかわかし・・・・・・・石田波郷
かたつむり日月遠くねむりたる・・・・・・・・木下夕爾
悲しみがこもるよ空(から)の蝸牛・・・・・・・・鷹羽狩行
かたつむりつるめば肉の食ひ入るや・・・・・・・・永田耕衣
かたつむり甲斐も信濃も雨の中・・・・・・・・飯田龍太
妻の疲れ蝸牛はみな葉の裏に・・・・・・・・沢木欣一
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