
夾竹桃かかる真昼もひとうまる・・・・・・・・・・・・・・篠田悌二郎
夾竹桃はインド原産という極めて強い、繁殖力旺盛で排気ガスなどにも強い木である。根や樹液に有毒な成分を含んでいるという。
インド原産というだけあって北国の寒いところには生育しないらしい。信州人に聞くと長野県には夾竹桃はない、という。

改良されたのか色々の色があり、赤、白のほかにピンク色の種類もあるようである。
私の住む京都では、冬も常緑のミドリがあざやかな木である。
夾竹桃は花期の長いことでも、花の少ない真夏には重宝するのではないか。単調な高速道路などでは、夏の景観を賑わすものとして貴重である。

三番目の写真は、夾竹桃の「実」というものである。
これは冬も加温する植物園のもので、私の家にも生垣に夾竹桃をたくさん植えていたが、こんな実は生ったことがない。
文字どおり熱帯的な環境ならば、実が生る、ということであろうか。

四番目の写真は、その実が熟して「種子」が綿毛に包まれて、そよいでいるところ。もちろん植物園の環境下でのもの。
ここまでが夾竹桃の説明であり、本題の掲出した句に戻りたい。
掲出した篠田悌二郎の句は、夾竹桃という季節感と「かかる真昼も人が生まれる」という二物衝撃の巧みさ、意表を突くような発想が見事である。
以下、歳時記に載る夾竹桃の秀句を少し引く。
画廊出て夾竹桃に磁榻(じたふ)濡る・・・・・・・・・・飯田蛇笏
夾竹桃荒れて台風圏なりけり・・・・・・・・・・山口誓子
夾竹桃花なき墓を洗ひをり・・・・・・・・・・石田波郷
白夾竹桃のたそがれながし予後の旅・・・・・・・・・・角川源義
病人に夾竹桃の赤きこと・・・・・・・・・・高浜虚子
夾竹桃戦車は青き油こぼす・・・・・・・・・・中村草田男
夾竹桃しんかんたるに人をにくむ・・・・・・・・・・加藤楸邨
しどけなく月下夾竹桃みだる・・・・・・・・・・篠田悌二郎
火を焚くや夾竹桃の花の裏・・・・・・・・・・波多野爽波
夾竹桃垣に潮の香があげて来る・・・・・・・・・・道部臥牛
怒涛もて満ち来る潮や夾竹桃・・・・・・・・・・岡田貞峰
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一番はじめの句の「磁榻」(じとう)とは磁器製の長椅子のことである。雨に濡れてもいいように、庭園などに置かれるのであろう。
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