
身籠りて子の手花火をまぶしがる・・・・・・・・・・・・・・・遠藤とみじ
はじめにお断りしておく。適当な手持ちの「手花火」の写真がないので、ネット上から拝借した。著作権は画像に明記されている通りである。
さて、私の第一歌集『茶の四季』(角川書店)に次のような歌がある。
手花火が少し怖くて持ちたくて花の浴衣(ゆかた)の幼女寄り来る
手花火の匂ひ残れる狭庭には風鈴の鳴るほど風は通らず・・・・・・・・・・・木村草弥
一体として鑑賞してもらいたい。
この頃では、線香花火というような単純なものよりも、ロケット花火のような派手なものが好まれるようだが、危険も伴い、音も高く「幼女」向きではない。
私の歌のように手花火を「持ちたい」気持ちはあるが、といって「怖い」という幼女の心理状態を、少しは表現できたかと思っている。
線香花火はパチパチと弾けた後に赤い火の玉が夕日のように、しばらく残っているのが面白い。
手花火は幼い頃の郷愁の火の色と言えるだろう。
掲出した句は、里帰りか何かで「身籠った」娘か何かの感情を巧く捉えて句にしている。
以下、手花火を詠んだ句を引いて終わる。
手花火に妹がかひなの照らさるる・・・・・・・・山口誓子
手花火のこぼす火の色水の色・・・・・・・・後藤夜半
手花火の声ききわけつ旅了る・・・・・・・・加藤楸邨
手花火を命継ぐごと燃やすなり・・・・・・・・石田波郷
手花火に明日帰るべき母子も居り・・・・・・・・永井龍男
手花火にらうたく眠くおとなしく・・・・・・・・中村汀女
手花火のために童女が夜を待ち待つ・・・・・・・・山口浪津女
手花火にうかぶさみしき顔ばかり・・・・・・・・岡本眸
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