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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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てんと虫一兵われの死なざりし・・・・・・・・・・・・・・安住敦
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    てんと虫一兵われの死なざりし・・・・・・・・・・・・・・安住敦

この句は安住敦の代表的な句として、よく採り上げられる。この句の前書きに「八月十五日終戦」とある。
つまり、兵隊に取られて苦労したが、幸いにして、遂に死ななかったな、という感慨の句である。

安住敦は明治40年(1907)7月1日、東京に生まれる。
立教中学卒業後、逓信省官吏養成所に入り、卒業後は逓信省に勤務。傍ら日本大学の夜学に通った。
逓信省勤務中に、上役の富安風生に師事し「若葉」に投句。昭和10年には、日野草城の「旗艦」に加わり、新興俳句の花形作家として活躍する。
草城が俳句を廃してからも「旗艦」を守り、同誌が官憲弾圧の為改題した「琥珀」を経て「多麻」を創刊する。
しかし太平洋戦争中に逓信省を退職。日本移動演劇連盟に参加したが、終戦とともに解散。
昭和24年、官業労働研究所に入り、同42年に理事に就任したが、翌年辞任している。
俳句は戦争後、久保田万太郎を擁して「春燈」を創刊。編集、経営に当たり、万太郎の没後、同誌を主宰する。
句集に「まづしき饗宴」「古暦」また、劇作家としても活動し、ラジオドラマ「女弟子」その他がある。
昭和四十一年には日本エッセイストクラブ賞受賞。元俳人協会理事長。昭和63年没。

私の第二歌集『嘉木』(角川書店)にも

   梅雨空へ天道虫が七ほしの背中を割りて翔びたつ朝(あした)・・・・・・・・・・・・木村草弥

というのがある。 少し懐旧にふけるのを、お許しいただきたい。
制作時期は、もう10数年以上も前になるが、大阪、京都、奈良の30数人が出席した合同歌会が、奈良の談山神社で開かれたときの出詠歌で、出席者の大半の票を獲得した、思い出ふかい歌である。自選50首にも選んでいるので、Web上でも、ご覧いただける。
この談山神社は藤原鎌足を祀るが、蘇我氏の横暴を抑えようと、中大兄皇子と鎌足が蹴鞠をしながら談合したという故事のある所である。ここに務める神官で、かつ歌人でもある二人の友人がいるところでもある。

「テントウムシ」には、益虫と害虫の二種類があって、この「ナナホシテントウムシ」は作物にたかるアブラムシなどを食べてくれる「益虫」である。朱色の背中に黒い●が7個あることから、この名前になっている。テントウムシには、ほかに「二星」などの種類があるが、これらはすべて「害虫」とされている。つまり、作物の汁を吸ったり、食害を与えたりする、ということである。
今日、農業の世界でも農薬、除草剤などの薬害の影響が叫ばれ、できるだけ農薬を使用しないように、ということになっている。こういう化学合成による農薬ではなく、この「七ほし天道虫」のように「天敵」を利用するとか、害虫の習性を利用して、雌雄の引きあうホルモン(フェロモン)を突き止めて、それを発散する簡単な器具を作り、雄を誘引して一網打尽に捕える、などが実用化されている。

ここで私の歌集に載せた一連の歌を引いておきたい。

   天道虫・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・木村草弥

菖蒲湯の一たば抱けばああ若き男のにほひ放つならずや

梅雨空へ天道虫が七ほしの背中を割りて翔びたつ朝(あした)

濡るるほど濃き緑陰にたたずめば風さわさわと松の芯にほふ

夏草の被さる小川は目に見えず水音ばかり韻(ひび)かせゐたり

散るよりは咲くをひそかに沙羅の木は一期の夢に昏るる寺庭

野良びとが家路を辿る夕まぐれ野の刻しんとみどりに昏るる

土鈴ふる響きおもはせ驟雨きて梅雨あけ近しと知らすこのごろ

茄子の花うす紫に咲きいでて農夫の肌にひかりあふ夕

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談山神社に関していうと、私の第四歌集『嬬恋』(角川書店)に、次のような歌がある。

談山の社に佇てば鞠を蹴る音のまぼろし「蘇我氏を討たむ」・・・・・・・・・木村草弥

この歌は、もちろん上に書いた鎌足と中大兄皇子の故事に因むものである。

安住敦の句をダシにして、すっかり私の作品などに多くの言辞を弄したが、お許しいただきたい。

天道虫は童謡にも登場する虫で、どこか人なつっこいところがある。
俳句にも、よく詠まれているので、それを引いて終わる。

 のぼりゆく草細りゆく天道虫・・・・・・・・・中村草田男

 旅づかれ天道虫の手にとまる・・・・・・・・阿波野青畝

 ほぐるる芽てんたう虫の朱をとどむ・・・・・・・・篠田悌二郎

 翅わつててんたう虫の飛びいづる・・・・・・・・高野素十

 天道虫だましの中の天道虫・・・・・・・・高野素十

 老松の下に天道虫と在り・・・・・・・・川端茅舎

 天道虫天の密書を翅裏に・・・・・・・・三橋鷹女

  愛しきれぬ間に天道虫掌より翔つ・・・・・・・・加倉井秋を

 砂こぼし砂こぼし天道虫生る・・・・・・・・小林恵子

 天道虫羽をひらけばすでに無し・・・・・・・・立木いち子

 天道虫バイブルに来て珠となりぬ・・・・・・・・酒井鱒吉

 天道虫玻璃を登れり裏より見る・・・・・・・・津村貝刀


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