
軽く飲む筈の深酔さるすべり・・・・・・・・・・・・・・・大牧広
百日紅──「さるすべり」は漢字読みして「ひゃくじっこう」とも呼ばれるが、この木もインド原産という。
最初は仏縁の木だったという。インド=お釈迦様という連想になるのであろうか。だから、はじめは寺院に植えられ、次第に一般に普及したという。
百日紅というのは夏の間、百日間咲きつづけるというところからの意味である。
和名はサルスベリで、木肌がつるつるで、木登りの得意な猿でも滑りそうな、という意味の命名であろうか。
写真の木肌を見てもらいたい。
プロである「植木職人」でも、木から落ちることがある(実際に転落事故が多く体を痛めることがある)ので、験(げん)をかついで植木屋は「さるすべり」とは呼ばず「ひゃくじっこう」と言う。
元来、南国産であるから春の芽立ちは遅く、秋には早くも葉を落してしまう。
この木も夾竹桃と同じく、夏の代表的な花木である。
以下、歳時記に載る句を引く。
炎天の地上花あり百日紅・・・・・・・高浜虚子
さるすべり夏百日を過ぎてもや・・・・・・・・・石川桂郎
いつの世も祷(いのり)は切や百日紅・・・・・・・・中村汀女
朝よりも夕の初心百日紅・・・・・・・・後藤比奈夫
さるすべり百千の花観世音・・・・・・・・松崎鉄之介
一枝はすぐ立ち風のさるすべり・・・・・・・・川崎展宏
さるすべりしろばなちらす夢違ひ・・・・・・・・飯島晴子
さるすべり懈(ものう)く亀の争へり・・・・・・・・角川春樹
秘仏見て女身ただよふ百日紅・・・・・・・・黛執
いふならば余燼の生や百日紅・・・・・・・・能村登四郎
百日紅ちちははひとつ墓の中・・・・・・・・上野燎
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