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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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壕の中・・・・・・・・・・・・・高田敏子
yoruga3ヨルガオ

──高田敏子の詩──(14)──初出・Doblog2005/08/03

        壕の中・・・・・・・・・・・・・高田敏子

   そそり立つ崖の上の壕の中は
   熱い太陽をさえぎって冷たい
   海に面した壁は
   艦砲射撃にうちぬかれて
   赤錆びた鉄骨が曲りくねった線を見せていた

   鉄骨の間から外をのぞいた私の目に
   朝顔に似た花の姿が映った
   白い花の 一りん 二りん
   熱帯樹の茂みに咲いて
   それはまごうことなく朝顔の花

   娘のころ作りつづけた慰問袋の中に
   花の種を入れたことがあった
   朝顔の種 コスモスの種
   私の庭から摘みとった種の一つがここに蒔かれ
   芽ばえ咲き 種をこぼして
   二十年を咲きつづけていたとしたら?
   この想像は少女趣味でありすぎるにしても
   私の心は花から離れることができなかった

   同行の若者たちは 壕の中でもしきりにカメラのシャッターを切っている
   私のカメラはフィルムが切れていた
   幸いにもフィルムが切れていたことで
   鉄骨に手をかけたまま そこにしゃがんで
   私は花を見つづけていた

   ここから見える海はいっそうに青い
   花は青い海を背景に次第に輪郭をはっきりと浮かばせ
   細くのびたつるは 海からの風に倒れては
   また支えを求めるようにして立ち上っている

    (詩集『砂漠のロバ』から)
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紹介しだすときりがない程である。この詩も先の詩と同様に南の戦跡を訪ねた際のものであり、思慮ふかい雰囲気に満ちている。いかがだろうか。

念のために書いておくが、掲出した写真は「夜顔」の花である。



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