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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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道尾秀介 『月の恋人~Moon Lovers~』・・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
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──新・読書ノート──

    道尾秀介 『月の恋人~Moon Lovers~』・・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
                ・・・・・・・・・・・新潮社2010/05/31刊・・・・・・・・・・・・・・・・

     お前の一言が、俺の運命を変えていく――冷徹な手腕でビジネスを成功させる青年社長・葉月蓮介が、
     夜の上海で巡り合った女。
     ありえない二人の物語は、美貌の中国人モデル、部下の社員らを巻き込んで予測不能の展開に……。
     話題沸騰、いま最高潮の人気作家がフジテレビ月9ドラマのために書下ろした眩いラブストーリー!


前にも採り上げた 道尾秀介である。テレビ化されて話題にもなった原作の本である。
新潮社の読書誌「波」2010年7月号に載る書評を転載しておく。
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     道尾マジック、「月9」に登場!           村瀬 健

 今の日本で、最も映像化が難しい小説を書く作家。道尾秀介さんをそのように評しても、おそらく賛同していただけるのではないか。なにせあのベストセラー『向日葵の咲かない夏』には、いかなる名監督をもってしてもドラマや映画には絶対にできない驚きの仕掛けが施されているのだから。
 今回、フジテレビはその道尾さんに月9ドラマ(「月の恋人~Moon Lovers~」月曜夜9時放送中)の原作の執筆を依頼したのだが、その最大の理由も実はそこにあった。
 最近、テレビドラマは成熟したとも閉塞したとも言われている。刑事物や医療物がヒットすると各局がこぞってそのジャンルで競合する昨今、起爆剤になるような新企画を考えて、「ドラマはまだまだ面白い」と言われるものを作らなければ先行きが厳しい。そういった危機感をドラマ制作の現場の人間はみな抱いていると思う。
 その中で今回われわれが考えたのが、現在活躍中の人気作家に新たに小説を書いていただき、本の出版と同時期にそれをドラマ化するという、おそらくはテレビドラマ史上、前例がないであろうプロジェクトだった。そして数多くの作家の作品を読み漁った中で、白羽の矢を立てさせていただいたのが、“誰も映像化できない”道尾さんだったのである。
 この人なら、いい意味で映像と距離を置いた作品を書いてくれるに違いない。既成のドラマの枠組みにとらわれず、われわれには想像できない世界を書いてくれるだろう。それが道尾さんの小説を読んだスタッフ一同の感想だった。
 傑作揃いの道尾さんの作品の中でも印象に残ったのが「光の箱」という中篇だった。高校の同窓会を舞台にした小説で、ラブストーリーなのだが最後に鮮やかなどんでん返し的展開があり、読後感は実に心地よい。最近、ファンの間では「道尾マジック」という言葉が定着しているそうだが、その表現がピッタリの内容だった。監督以下、全員がこの小説に惚れ込み、「結末まで展開が読めないラブストーリーを書いてください」と、道尾さんにお願いする決意を固めた。
 新潮社経由での依頼を道尾さんが受けてくださった時は本当に嬉しかったのだが、驚いたのはプロットの原稿を読んだ時だった。今回、われわれが道尾さんに投げかけた設定は、「木村拓哉さん主演」「主人公は会社社長」「ラブストーリー」という三題噺だった。道尾さんだけにひねりの効いた展開の原稿が来ることも覚悟していたのだが、いただいたプロットはシンプルで明快な「ボーイ・ミーツ・ガール」の路線であり、しかもすでに個々のキャラクターが活き活きと動き出していた。正直なところ、ドラマの原稿で最初からここまで登場人物の性格が際立って書かれたものを読んだことはない。
 また、おそらく実在の人間を想定しながら小説をお書きになったのは初めてだと思うが、主人公の葉月蓮介やシュウメイといった登場人物たちは読みながらそこにいると錯覚するほどリアルな存在感を示していた上に、キャラクターとしての深みを醸し出していた。
 後で聞いたところ、道尾さんは今回かなり映像を意識してシーンを作られたそうだが、その中でも印象的だったのが第一話に登場した、正方形に並べた4枚のコインの形からある生物を連想するエピソードである。この話は道尾さんご自身の体験に基づくそうだが、お金も見方によっては異なるものに見えるという示唆は「お金と愛」というわれわれが考えていたドラマの主題にも見事に符合しており、そのイメージを広げて新たな場面も作らせていただいた。
 小説の魅力と、ドラマの魅力。今回の『月の恋人』プロジェクトは二つの異なる味わいを楽しんでいただけるストーリー展開になっている。この雑誌の発売時にはまだドラマは完結していないので詳細をお知らせできないのが残念だが、小説のラストに描かれている、4枚のコインがさらに別の物に形を変えて昇華していく話をドラマでも存分に使わせていただこうと考えている。私は原稿でこの結末を読んだときには体に電流が走るほどの衝撃を受け、脚本家と一緒に「これでドラマが完成する」という確信を深めることができた。
 そして、原作と並行して主題歌を依頼していた久保田利伸さんにもその場面を伝えたところ、それまで「今一つモチーフが足りない」と悩んでいた久保田さんが一言、「見えました。それこそがラブストーリーですね」。4枚のコインが“ある物”に見えた久保田さんは、その後ほどなく『LOVE RAIN~恋の雨~』を書き上げてくれた。これもまた道尾マジック、ではないだろうか。  (むらせ・けん フジテレビ・プロデューサー)
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道尾秀介については『球体の蛇』を見てもらいたい。
それ以後にも多くの新作が書かれている。 この近年、毎年のように直木賞候補に挙げられている。
詳しくは、Wikipediaの記事などを参照されたい。



↑ このフジテレビのドラマ「月の恋人」の中で歌われた主題歌・久保田利伸「LOVE RAIN~恋の雨~」を出しておく。削除されたらゴメンなさい。


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